完成へ向けて
度重なる完成時期の遅延に対し、僕たちよりまず銀行が慌てはじめます。それはそうです、完成が遅れるということは、それだけローン返済の開始時期も遅れるということになります。私の年齢からして、ギリギリのところで審査を通してくれたにも係わらず、それがS社の見通しの甘さから返済開始時期が見通せないのですから。
それだけではありません、アパートローンというのは一括で融資されるわけではないのです。necottoの場合はざっと以下のような感じになります。
1 解体工事完了時点 20%
2 基礎工事完了時点 20%
3 構造体工事完了時点 20%
4 内装・外構工事完了時点 20%
5 引き渡し時 20%
しかも、1の段階から利息が発生します。仮に総額1億円の融資と仮定(もちろん現実とは異なります)しますと、まず1の段階で2000万円の手形が切られ、そこから2までの利息が生じます。2の段階では4000万の手形が切られ、僕たちは1の2000万円に利息を付けて返済する形になるのです。3の段階では6000万円の手形がきられて4000万円を返済、4の段階では8000万円の手形が切られて6000万円を返済、最終的に1億円の手形切られて8000万円を返済。結果手元には1億円の融資が残ることになります。
この各段階の間が空けば空くほど、その感に生じる利息は増えるのです。しかもそれは銀行も望んでいない増額となります。この負担をどうするのか、S社と銀行のやり取りも激しくなったそうです(後日銀行の担当者から聞いた話ですが)。
ありがたいことに、銀行の担当者はS社との交渉で無理やり作業を早めることより、しっかりとした工事を行うことに重点を置いてくれました。現場に入る業者についても念入りにチェックした上で各段階の融資にGOサインを出したのです。
猫の神様のお導き
まるっきりS社が悪者のような印象を持たれるかもしれませんが、そうではありません。工期が延びることはS社にとっても何のプラスにもならないのです。S社の担当は人が良いというか調子が良いというか、僕たちを安心させようとして「考えうる最短の工期」をいつも僕たちや銀行に説明するのです。結果、こちらの神経を逆なですることになるのですが(笑)
しかし、その中で僕たちは前回書いた「チームnecotto」(と勝手に僕たちが呼んでるのですが(笑))の面々と出会います。設計担当の建築士の先生、電気工事の方、内装工事の方、塗装屋さん、それらの方がそれぞれの役割以上にnecottoに力を貸してくれます。
電気屋さんは「基礎も鉄骨も立派に工事してる」とチェックしてくれましたし、内装工事の担当者は作業の内容を逐一説明してくれ、僕たちの要望もその場その場ですぐ対応してくれました。塗装屋さんも作業しながら各部のチェック、場合によっては補修もしてくれたのです。
そして設計担当の建築士の先生、こちらは引き渡し前の最終チェックを買って出てくれました。もちろん公的機関による審査は通りましたが、「これだけ各工程の間が空いてるので、全体をしっかり確認します」と仰ってくださったのです。わざわざ時間を作ってくださり息子である若先生とお二人、本当に汗だくになってチェックしてくれた上に、S社が公的機関に提出した膨大な書類も全て再度確認してくださったのです。
もしこれを第三者機関に依頼していたら相当の金額が請求されたはずです。それを「自分が設計した物件だから」と、嫌な顔もせず、無償でやってくださったのです。S社との契約は全て終了しているにも係わらず、です。
僕たちは節目節目でこういった素敵な人たちと出会い、力を借りることが出来ました。
それだけではなく、絶妙なタイミングで思いがけない幸運や助け舟にピンチを救われることが幾度となく起こりました。
それを僕たちはいつしか「猫の神様のお導き」と呼んでいました。
あまり信心深くはない僕ら夫婦ですが、本当にそんな出会いや出来事に恵まれたからこそ、necottoは今があるのです。
いよいよ、necottoは完成の時を迎えます。
つづく
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