歯車は突然ズレる
H28年1月、建築を依頼する業者を福岡市内のS社と定め、ついにnecottoの建築は動き始めます。
まずは設計の詰めの作業。担当してくださる建築士の先生とは何度も面談し、僕たちの要望を汲み上げていただきました。necottoはなんと言っても『キャット・ファースト』、猫の為の設備が満載です。そして女性専用であるがゆえのセキュリティ面、これもかなりこだわっています。建築士の先生が猫好きだったことも幸いし、おかげで満足のいくプランが出来上がりました。
では工事開始!とは行きません。次に銀行の融資に対する審査があります。
これがまぁ、当然かもしれませんが僕たちの資産・収入の全てが丸裸にされます。むしろこの過程のお陰で僕たち自身がその現状を詳しく知りえたと表現していいかもしれません。否が応でも自分たちの足元を見直すこととなりました。今となっては良かったと思っています。
その中で工期についても銀行は審査するわけですが、S社からはH28年12月末の完成ということで工程表が銀行及び僕たちに提示されました。そしてついに銀行の審査も通り、ようやく工事が始まることとなるはず、でした。
しかしそれは突然起こるのです。そして一度は噛み合ったはずの、噛み合っていたはずの歯車を、完全に狂わせることになります。
平成28年4月14日 熊本地震
S社は自前の作業員などを持っているのではなく、提携している各業者のスケジュール調整し、その手配をして成り立っている会社でした。下請けというより、より対等な関係の業者を多く抱えて成り立っている会社だったのです。
それが、熊本地震の発生により全てが狂います。解体業者も、基礎工事の業者も、全てが熊本地震復旧復興に回り、いつこちらの工事に入れるか分からない状況となります。
当初S社は「H29年4月入居には間に合います」と説明していました。実際そう思っていたのでしょう。それが以前の記事にも書きましたが、実際の完成はH30年の7月。熊本地震が全てを狂わせ、一度狂った歯車は容易には元に戻らなかったのです。
necottoの工事は「手配のついた業者が作業し、終了したら一旦休止」「そしてまた手配のついた業者が入る」という悪循環に陥ります。S社の示す完成時期も幾度となく延び、その度に「今度こそ間違いありません」としか説明がありません。つのる不信感、そして焦燥感。しかし僕らは「急かして突貫工事をされるくらいなら、遅くてもひとつひとつ僕たち自身の目で確認しながら進めていこう」という判断を下すのです。
結局最後は「人」
とは言っても僕たちは所詮素人、きちんと工事が進んでいるのか見極めることなどできません。そこで僕たちはまず「現場に入って実際に作業している人と親しくなる」ことにしました。現代では時代遅れとされてますが、毎日差し入れをし、話をしていかにこの物件に僕たちが情熱を持っているか伝えました。そして作業している人たちが「丁寧な仕事をしているか」を観察したのです。
そしてもうひとつ、銀行の担当者との繋がりです。これが幸いなことに、銀行としては大きな融資とは言えないnecottoの建築に対して、担当者は本当に親身になって相談に乗ってくれました(もちろん融資が焦げ付いてはいけないというのが第一でしょうが)。その担当の方がS社の動向や工事の進捗を厳しく監視してくれたのです。
そうして僕たちは特別に仲良くなった業者の方、そして銀行の担当者、そういった僕たちの味方になってくれる人たちと「チームnecotto」とも呼んでいいような関係を築きます。そう言った人たちの支えや助言などを受け、necottoはゆっくりと、しかし確実に完成に近づいていくのです。
つづく
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