はじめに(免責事項)
この記事では我が家の愛猫「桔花(きっか)」が猫伝染性腹膜炎(以下FIP)を発症し、重篤な状態から回復に至った経緯を紹介しています。
あくまで記録の公開であり、その治療法を推奨するものでも治療の過程で用いた薬剤やサプリメント等の効果を保証するものでもありません。実際に試される場合は自己責任にてお願いいたします。私たちと同じような治療を試されて、期待通りの結果が得られなかったとしても当方は一切責任を負いかねますのでご了承ください。
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なお当記事は予告なしに内容が変更または削除される場合がございます。
始まりは立て続けの嘔吐
2021年末、年の瀬も押し迫った12月30日、それは突然始まりました。
我が家で飼っている9匹の猫の内、6匹が突然次々と嘔吐を始めたのです。
猫の嘔吐は珍しいものではありませんから、初めはその内に治るだろうと思っており実際に5匹は最初の嘔吐から2~3日で完全に回復しました。
しかし、桔花だけが回復せず嘔吐を繰り返します。当然食べ物は一切受け付けず、最後には水も飲まなくなってしまいました。
通常、お腹の中の物を吐き切れば症状は改善していくものですが、いつまでも胃液のようなものを吐き続けます。間の悪いことに、その時は年末年始で開いている動物病院もありません。動物救急病院も考えましたが、我が家からは遠く、移動のストレスや体への負担、そして4日には診療を再開する動物病院が近くにあったため複合的に考え4日を待つことにしました。
4日までに回復しないかとも期待しましたが、状態は全く回復せず4日を迎えます。
回復しない病状、そしてFIP陽性
2022年1月4日火曜日。
病院で診察を受け一安心かと思いましたが、桔花は思いのほか重篤な状態でした。酷い脱水と、さらに低体温症を引き起こしていたのです。
4日の段階で体温は36.8℃、猫の平熱は38~40℃ですから、いかに低体温か分かります。急遽皮下点滴200㎖が行われ「とにかく体を温めるように」との指示を受けて帰宅しました。血液検査もしましたが、その時は数値に特筆すべき異常は見られませんでした。
翌日も皮下点滴200㎖。低体温症を起こした猫は逆に涼しいところに行こうとします。冷たい床であったり、浴室であったり。僕らはそれを猫ベッドに戻し、毛布を掛け、ペットボトルにお湯を入れて急ごしらえした湯たんぽを添えて体温が回復するよう努めます。
2022年1月5日水曜日。
この日も病院で皮下点滴。体温は36.5℃。前日よりもさらに下がっています。
しかし脱水症状は落ち着いたので、体温さえ戻れば大丈夫、峠は越えたと説明され、安堵して帰宅しました。しかし桔花はこの夜も相変わらず水は飲むものの嘔吐してしまいます。
そして、失禁。
寝ている猫用ベッドやクッションがいつの間にかぐっしょり濡れています。どうやら桔花自身も失禁していることに気づいていないようです。
「ホントに大丈夫なの?」と思いながら一夜を明かしました。
2022年1月6日木曜日。入院。
桔花の嘔吐は止まりません。
もうお腹の中には何も残っていないため、2~3時間ごとに泡状の胃液を吐き続けます。明らかに体力も落ちてきてるのが見て取れます。
この日も点滴をしてもらうために病院へ。そこで体温を計ったところ「Low」との表示で数値が出ません。心音も弱く、即入院となりました。
酸素室に入り、静脈点滴に切り替わりました。
血液検査の結果は肝臓と腎臓の数値が極端に悪化しており、とにかく今は体温を上げることを第一に処置するそうです。
まさに急変です。昨日の説明はなんだったのか問い詰めかったですが、そんなことをしても桔花の容体は良くなりません。とにかく出来るだけの処置をしてくれるよう頭を下げ、病院を後にしました。
「今夜このまま亡くなる可能性もあります」と告げられ、僕らは現実を受け入れられないまま家に戻ることになったのです。
1月7日~1月11日。体温は回復するも戻らない体調
幸いなことに最悪の連絡を受けることはなく、桔花の入院は続きました。
何より良かったのが入院2日ほどで体温が38度台まで回復したこと。ですがエコー検査の結果心臓に疾患があることが判明します。
体調を崩す前までは元気に走り回っていたのに? 信じられない思いでしたが、心臓に関しては食欲が戻り次第投薬治療を始めるとのことでした。
が、その肝心の食欲が戻りません。
血液検査の値は「炎症」を示す値以外は肝臓も腎臓も正常に近くなっています。「恐らく一時的なものだったのだろう」との先生の見解です。しかし、食欲が戻らない。それどころか相変わらず胃液を吐き続けているそうで、尿意も相変わらず感じないのか失禁を繰り返していました。
さらに腹水と胸水が大量に溜まってしまっていました。9日から11日の間は注射で胸水を抜き取ります。この時は心臓疾患からだろうとのことでしたが、後にFIPでもウエット型と呼ばれる特有の症状であったことが判明します。
血液検査の数値で見ると、これで食欲等が回復しないのは理由が分からないとの説明を受け、僕らは話し合って桔花を退院させることにしました。引き続き入院治療の予定でしたが、翌日先生と話して連れ帰ろうということに。なぜ回復しないのか分からないのであればストレスの掛かる病院に置いておくより、家に連れ帰った方がきっと桔花にとって良いだろうと判断したのです。もしその判断が間違っていて最悪の事態を招いたとしても、それが桔花にとって、そして僕たちにとっても一番良いことだと思えたのです。なぜなら明らかに桔花の容体はむしろ悪化しており、このままだとこの狭いケージの中で息を引き取るだろうとの確信にも近い予感があったからです。
結果、その判断は正しかったと思える方向に事態は動いていきます。
1月12日水曜日。退院、そしてFIP陽性が判明。
動物病院側に退院を申し出たところ、すんなりと同意してもらえました。
はっきりと言葉にはされませんでしたが、どうやら先生も僕らと同じように考えていたようです。「入院を続けてストレスを与えるより、自宅でリラックスした方が希望が持てるかもしれない」との言葉が全てを物語っていました。
当日は妻が桔花を迎えに行き、LINEに写真を送ってくれました。
痩せ細って、床に倒れ込んで頭も上げる力もないその姿に、涙を堪えることができません。
そしてその日の19時過ぎ、仕事終わりの僕の携帯に病院から留守電が残されてるのを確認します。
『桔花ちゃんですが、FIP陽性でした』
一瞬、何を言っているのか分かりません。そう言えば「念のため腹水と血液を病理検査に回します」と仰ってたのを思い出し、その結果の話だと理解するまで少し時間がかかりました。電車の中だったので、妻にLINEして病院に確認するよう頼みます。
家に帰りつくまでに返信があり「死亡率が非常に高い事」「ステロイドやインターフェロンなどでの対処療法が考えられるが、今の桔花の状態では治療の負荷に耐えられないだろう」と説明されたとのことです。
この時の絶望感を忘れることはできません。
藁にもすがる思いで情報収集
帰宅し、妻と話し合って「とにかく出来る限りのことはやろう」との結論に達します。
2人とも桔花を看取ることになるだろうという覚悟をし、とにかく桔花にストレスを与えないことを一番に考えました。
同時に、FIPの治療の情報を集めます。
僕らも多少なりとも保護猫の活動に関わってきましたから、FIPがいかに怖い病気であるかは知っています。
しかしいざその治療となった時、そして対処療法以外の選択肢にどのようなものがあるかは「クラウドファンディングして資金を募る方がおられるくらい高額な薬がある」程度の知識しかありませんでした。
桔花のために何ができるのか。僕らは改めて情報を集めました。
一筋の光明
そんな中、ひとつの情報が寄せられます。桔花の事はTwitterでも発信していましたので、多くのご心配や励ましの言葉をいただいておりました。
その中で1人のフォロワーさんがDMでとあるインスタライブの動画を送ってくださったのです。2人の女性がFIPの治療について語り合っている動画で、オンラインインタビューの形式となっていました。
聞き手の女性は保護猫団体の方、そして答える側の女性は個人的に保護活動をされている方のようです。
そこで話されていたのが「FIPを発症した猫にイベルメクチンと乳酸菌を与えたことによって寛解した」という話。
イベルメクチンは本来抗寄生虫薬として開発された薬です。
実は人間がこのイベルメクチンを服用することで、新型コロナウイルスの治療薬としての効果が期待できるのではないかと一時期話題になりました。
その効果については立証されておらず、議論が続いている段階なのでここではこれ以上触れませんが、そのイベルメクチンを猫に投与し、補助的に乳酸菌を与えるという動画でした。
僕たちは藁にもすがる思いで桔花を診てくださっている先生に相談しました。
すると「イベルメクチンよりもエネアラを与えてみてはどうか」という提案をいただいたのです。
エネアラは元々が犬猫用に開発されたサプリメントです。そうです、医薬品ではありません。あくまでもサプリメント。
効果はミトコンドリアの活動を活性化させることによって脂質代謝を促し、体重管理などペットの健康維持に寄与するというもの。決して特定の病気への効果を謳ったものではありません。
それを、FIPに罹患した猫に与えることによって、症状の改善・寛解が見られたという論文を北里大学の農学部の先生が昨年発表したのです。
この記事にあるアミノレブリン酸(5-ALA)という成分がエネアラの主成分となります。
当時、桔花はすっかり痩せ細り、弱り切っていましたから、僕らは「なるべく桔花に負担が掛からない方法」を選択すべきだと判断しました。
イベルメクチンは駆虫薬なのでやはり肝臓等に負担がかかるという意見を目にしていましたが、その点エネアラは元々が犬猫の健康維持を目的に作られたサプリメントです。
そしてFIPは猫伝染性腹膜炎。消化器系の病気です。
前述の動画では消化器の働きを補助する目的で乳酸菌を同時に与えたという話でした。
僕らは全くの独断ですが、エネアラと乳酸菌を併用して与えてみることにしました。
早速動物病院でエネアラを処方してもらい、ネットで乳酸菌サプリメントを購入しました。
ここから、奇跡と言って良いような桔花の劇的な回復が始まるのです。
奇跡的な回復の記録
退院当日の桔花は前述の通り立つこともできないほど弱り切っていました。
当然自力で水を飲むこともできません。
まず僕らは桔花の体温を維持することに腐心します。低温のカイロを購入し、桔花が寝ている毛布の下に忍ばせます。そしてお水。シリンジも用意しましたが、まだそれを使って給水することも難しそうだったので、指で口元を濡らしてあげました。幸い、それを舌を出して舐める程度の体力は残っていました。
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1月13日木曜日(退院2日目)
なんと2日目にして桔花は立ち上がり、自力で移動を始めます。
少しでも落ち着ける場所を求めているのでしょう、ヨロヨロと移動し倒れ込むように横になります。僕らはその下にカイロを忍ばせます。相変わらず水を飲もうとはしないので今日からシリンジである程度の量を強制給水。誤嚥などを起こすこともなく飲んでくれました。
そして食事、もちろん食べられませんので「ちゅ~る」を昨日の水と同じように口元にちょんちょんと付けます。舐めとってくれましたが、2~3回でそれもやらなくなったので口元を拭いてあげます。
そして昨日まで点滴を受けていましたからおしっこをします。尿意を感じることができないのか垂れ流しです。おしっこをしたら気持ち悪いので別の場所に移動。
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僕らは桔花にストレスを与えないよう、家の中を自由に動けるようにしていました。
桔花が主に移動するのは、ホットカーペットに置いてるクッション、猫用のスツール、そして僕らが寝ているベッドの上です。僕らはその全てにペットシーツを敷き詰め、いつ桔花がおしっこをしてもいいようにしてあげました。
1月14日金曜日(退院3日目)
桔花は劇的に回復します。
なんと自力でちゅ~るを舐めるように。4分の1本程度しか食べることができませんでしたが、それでも十分です。やはり入院のストレスが大きかったのでしょう。お水もシリンジと口元を濡らす方法の両方を平行に行い、なるべくストレスが掛からないように気を付けます。
与えたちゅ~るは少しでも腹膜炎に効果があるよう期待して「乳酸菌ちゅ~る」です。
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1月15日土曜日(退院4日目)
一旦退院して、場合によってはもう一度入院という話になっていましたが、退院後の回復が著しいのでしばらく自宅で様子を見ることにすると病院にお伝えしました。
すると「水分がそれでは足らないと思うのでご自宅で皮下点滴することをお勧めします」とのこと。素人の僕らで出来るのか不安でしたが、やり方を教えるとのことでしたので、病院がお昼休みの時間に皮下点滴を受取りに。
ネコのぬいぐるみを使ってやり方のレクチャーを受けます。
ポイントは「液剤を体温と同じくらいまで温めてあげること」と「針を刺す角度」。特に後者が上手くいかないと筋肉を傷つけたり向こう側に針が突き抜けてしまうとのこと。妻はとても出来ないと言うので、これは僕が担当することになりました。
皮下点滴は1本1ℓ入りで一日100㎖を目安に投与するので10日分です。
純粋に水分補給のみが目的で、栄養や薬剤は含まれていません。そういった物は静脈点滴でしか投与できないのだそうです。
1月16日日曜日(退院5日目)
皮下点滴が効いたのか、桔花は大量のおしっこをしました。
そしてなんと、自力で毛づくろいを始めます。嘔吐やおしっこの跡を舐めて綺麗にしようとしています。もちろん僕らがタオルで拭いてあげていたのですが、やはり気になるのでしょう。嬉しくて、泣きながら妻に桔花の様子をLINEしたことを覚えています。
食事はまだ乳酸菌ちゅ~るのみですが、明らかに前日より量が増えてきています。
このまま食欲が戻って、固形物が食べられるようになれば、いよいよエネアラの投与に進みます。通常の投薬のように、無理やり飲み込ませることも考えましたが、現状で回復が見られる以上、余計なストレスは与えない方がいいだろうとの判断です。
1月17日月曜日(退院6日目)
退院後初めて、桔花が排便します。トイレに行くことはできず、寝ていた場所でしたが、きちんと砂を掘るような動作をして排便しました。入院中の病院でも排便はありませんでしたから、実に約2週間ぶりの排便です。
これは胃腸がきちんと活動を始めたことを意味します。退院直前のエコー検査では消化器系が全く動いていないとの話でした。
1月18日火曜日~1月25日火曜日
桔花の食欲は目を見張るほどの回復を見せます。
もちろん多少の波はありますが、時間が経過するごとにその量は増えて行きました。
そしてついにトイレの利用を再開します。ペットシートを敷き詰めているとはいえ、僕らのベッドで排尿していたりしましたから、マナーウェアの使用を考え始めていた矢先でした。
実際、マナーウェアもすでに購入していたのですが、一度トイレの利用を再開してからはもう粗相することもなくなり、使用すること無く終わりました。
このように順調に回復していった桔花ですが、ただひとつ問題がありました。自力で水を飲まないのです。
皮下点滴のお陰で順調に排尿はありましたが、全く水を飲もうとしません。
ドライフードも食べるようになっていましたから、なんとか自力で水を飲んでほしい。
僕らはご飯を食べたら口元を濡らす事を繰り返しました。
1月27日水曜日~1月31日月曜日
そしてついに桔花は自力で水を飲むことを再開します。
一度飲み始めてからはみるみる飲む量が増えていきます。僕らは1月30日から皮下点滴を中止することにしました。15日から続けてましたので、2本目の半分ほどでの皮下点滴からの卒業です。
そしていよいよ、エネアラと乳酸菌の2種類のサプリを与えて行くことになります。
2月1日火曜日~現在
北里大学の論文ではエネアラは1日2錠与えたとなっていましたが、僕らは桔花がすでに十分に回復していること、そして桔花の体重が入院前の半分近くまで落ちていたことを考慮し、1日1錠与えることにしました。それは現在も変わっていません。
最初は乳鉢ですり潰してドライフードに混ぜてみましたが、匂いが気になるのかあまり食べませんでした。そこでピルカッターを用いて小さくすることにしました。
2分の1個など色々と大きさを変えて与えた結果、1錠を8つに割り、それを4つずつ2回に分けて与えることで落ち着きました。
乳酸菌も同様です。1錠を8つに割りますが、こちらは1日半錠分与えています。
なぜなら僕らが与えている乳酸菌のサプリはペット用ではなく人間用だからです。成人で1日2錠とされているサプリメントでしたので、桔花には半錠で十分だろうという判断です。
なぜペット用ではなく人間用サプリを選択したかというと、前述のイベルメクチンについて語られていた動画の中でペット用より人間用の方がやはり品質が良く、実際に猫に与えても害は出なかった、と語られていたからです。
しかしこの判断には相当悩みました。もし実際にあなたがご自身の猫ちゃんに与えるのであれば、しっかり吟味してから決められてください。
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幸い、桔花は以上の処方により、以前と変わらない元気を取り戻します。
現在では他の猫にじゃれて飛び掛かり、追い払うくらいです。
まとめ:肝は「エネアラ」と「乳酸菌」、そしてストレスフリー
以上が、昨年末から現在までに桔花と僕らに起こったことです。
正直、何が良かったかは分かりません。
ただ確信を持って断言できるのは「1月12日の退院の決断は正しかった」ということです。写真にあるように、もう桔花の様子は限界に近かったと思います。
それがウチに戻り、ストレスから解放されたことがサプリを投与できるまでの回復を促したのだと思います。
そして北里大学のエネアラの有効性を確認したとする論文、イベルメクチンと乳酸菌の大量投与でFIPから寛解したという動画との出会い。
色々な幸運が重なって、桔花は回復しました。
全くの我流とはいえ、エネアラと乳酸菌サプリの併用という方法に辿り着いたのです。
もちろん何よりも桔花自身の生命力の強さがあったことも忘れてはいけませんが。
今後、桔花の体重が元に戻ったら今度は心臓の治療に取り掛かる話になっています。
引き続きエネアラ&乳酸菌は与え続けていきますので、また経過をご報告したいと思います。
それが、再発などの悪いご報告ではなく、良い報告になることを今は祈るばかりです。
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